はじめに
理学療法士(PT)はよく聞くけど、作業療法士(OT)って何? 「作業療法士ってリハビリの人でしょ?」そう思ったあなた、正解です。でも、実はそれだけじゃないんです。作業療法士は病院のベッドサイドだけでなく家の中、職場、学校、地域、時には企業や海外でも活躍しています。作業療法士とは、その人らしい人生を、“作業”を通して支える専門家です。でも、「作業」っていったい何のこと?
作業ってなに?
「人が日々の生活の中で行う、意味や目的のある活動すべて」 (世界作業療法士連盟による定義)
もっとわかりやすく
- ご飯を食べる( 一人で食べる、外食、白飯、麺 etc… )
- 家事をする( 炊事、洗濯、掃除 etc… )
- 仕事をする( 病院、企業、個人経営、パソコン、出張 etc… )
- 学校に行く、遊ぶ( 小中高、放課後に遊ぶ、学童 etc… )
- 趣味を楽しむ( ゲーム、アウトドア、アーティストライブ etc… )
ほんの少しだけ例で挙げましたが私たちが日々やっていることすべてが作業であり、その人らしさを形づくっているんです。
意味ある作業
例として「食事」をあげます。もし何らかの理由でそれが難しくなったとしたら?
もちろん「食べ物を認識して、手を使って、口に入れて、噛んで飲み込む」といった機能的な動作を支援することも重要です。これがいわゆる「リハビリ」のイメージに近いかもしれません。
でも作業療法士は、それだけでは終わりません。
人にとって「食事」が持つ意味はそれぞれ違います。栄養をとることが大事な人、家族との団らんの時間として楽しむ人、友達と外食に行くのが好きな人、食事そのものをコンテンツにしてSNSで発信する人、プロとして料理を仕事にしている人など
たとえば対象者(クライエント)が家族みんなで食卓を囲む時間が好きだとします。作業療法士は医療の専門職として、手の機能や嚥下機能、認知機能などに対する治療的な介入を行いますが、それだけでは終わりません。ご家族に協力をお願いしたり、毎日は難しくても土日の夕食だけ一緒に食べるといった現実的な提案をしたりします。また、テーブルや椅子の高さ、使いやすい食器や食具の選定など、環境にも配慮します。こうした支援によって、「ごはんを食べる」という行為に、その人にとっての意味や喜びが生まれます。
つまり、「食べる」一つとっても、その人にとっての意味は千差万別です。作業療法士は、その意味に寄り添いながら支援を考える専門職です。
作業療法士の働くフィールドは無限大!
作業療法士の働くフィールドは多岐に渡ります。一部を紹介します。
- 医療現場 ( 急性期、回復期病院、クリニック)
- 精神科領域 ( 精神科病院、就労移行支援 A/ B型、地域生活支援センター)
- 小児領域 ( 小児科病棟、発達支援センター、療育施設)
- 高齢者・介護領域 ( 老人保健施設、特別養護老人ホーム、デイサービス、サービス付き高齢者向け住宅 )
- 地域リハビリ ( 訪問リハビリ、訪問看護ステーション、地域包括支援センター )
- 自費・起業 ( コンディショニング施設、個人事業 )
- 企業・行政 ( 職場復帰支援、健康管理・障害者雇用支援、市役所など自治体での介護予防 )
- 住環境支援 ( 福祉用具専門店や工務店で住宅改修の提案 )
- 教育・支援 ( 大学・専門学校の教員、研究者 )
- 国際支援 ( JICAなどの国際支援 )
この他にもOTはまだまだ知られていない場所でたくさん活躍しています!
AIに負けない作業療法士という仕事
オックスフォード大学の研究では、AIに仕事を奪われにくい職業の中で、作業療法士は第6位に選ばれています。それは、作業療法士の仕事が、人との対話や関係性、柔軟な判断など、人間らしさを大切にする職業だからです。「やりたいこと」を一緒に考えたり、生活に合わせた支援をしたりする仕事は、AIにはまだできません。作業療法士は、人にしかできないリハビリをする仕事なのです。
最後にOTやろうぜ!
下の画像は現日本作業療法士会会長の山本先生にいただいたサインです。この力強いメッセージに、私はいつも励まされています。きっとどこかで、同じように「作業を通じて誰かを支えたい」と思っている仲間がいる。そう思いながら、今この瞬間も、目の前のクライエントに向き合っています。作業療法士は、人の「やりたいこと」や「その人らしさ」を支える仕事です。病気やけがだけでなく、心や生活、未来に寄り添う場面がたくさんあります。誰かの人生に寄り添いたい、人の力になりたいと思ったあなた。きっと作業療法士という仕事は、あなたの力を活かせる場所です。少しでも興味があれば、ぜひのぞいてみてください。私たちと一緒に、OTやろうぜ!

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